ビアバー

読めるか読めないかは別として、かばんの中に1冊は本を忍ばせている。忍ばせながら電子書籍を読むことも多いが、紙を開きがちなのは居酒屋の類。最近はビアバーが多い。

優柔不断な私はこの十数年、「選ばなくていいから」という理由でビールを飲み続けてきた。先日、バーを開業した友人にも「おちけんちゃんと言えばビールやろ」と言われた。もちろんビールは好きだが、ビールにせよ何にせよ、「味わう」ということをもう少し学ぶべきだと思うようになったのは、周りに人がいなくなって酒と向き合う時間が増えたせいだろうか。

特にこだわりはなかったが、今暮らしている街にはビアバーが多い。全国の小さなブルワリーと提携して、多彩なビールをつないでいる。分からないなりに「こんなものが飲みたい」と相談してみると、なるほど、同じビールでも驚くほど広がりがある。「ビール」と名乗るくせに全くシュワシュワしないじゃないか!と思ったら、日本で言うところの「ビール」というのは「ラガー」という種類らしい。嘘だろ、ラガーって品名じゃないのかよ。

これまでの飲酒ログを頼りに、勘でビールを頼む。一口、二口含んで味を確かめると、かばんに忍ばせていた読みかけの本を開いて、ビールと交互にページを繰る。これがとにかく楽しい。少しクラっときたところで文字を追うと、すっかり自分の時間に入り込むことができる。周りの目や仕事の進捗など遠くに放り投げて、時に笑い、時に涙しながら本を読む。酒の旨みもさることながら、この時間がとにかく旨い。

今日はGRAPEVINEのファンクラブの会報を読んだ。たった数ページのタブロイドだが、これまでは忙しさにかまけて読まずに部屋の隅に追いやってばかりいた。先週末にライブを観たばかりということもあって、メンバーの表情や言い回しが手に取るように感じられる。「(笑)」に釣られて、私もフフッ、と笑ってしまう。一人なのに。店なのに。良いんだよ、こっちは酔ってんだから。

言うまでもなく、酔ったまま読む文章は半分ぐらいしか頭に入らない。もちろん、ビールの銘柄や知識も覚えられるのは半分ぐらい。”ハーフアンドハーフ”でも記憶に残れば十分だろう。残りの半分は、ただただ素直に心身を休めるのに費やす。最近の私には、ビアバーが一番の知識と教養、そして心身を休める場になっている。

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