トイレに行列をしているとき、ご婦人に「和式使われます?どうぞお先に」と言われることがあります。洋式でないと使いたくないと言うのです。そうおっしゃるなら、と順を替わっていただくのですが、私はそのたびなんとも妙な気持ちになります。
何しろ、以前は逆だったのです。和式がスタンダードで、空いた一室がたまの洋式だったりすると、それこそご婦人方が「洋式使われます?どうぞお先に」などと道を譲ってくれたものです。
その心は、声にこそ出さなかったものの「誰とも知らぬ人と間接的に尻を重ねる感覚が気持ち悪い」ということに尽きました。その後洋式トイレには使い捨ての便座シートが備え付けられましたが、今となってはわざわざシートを敷くこともしなくなり、誰かが尻を乗せた便座の上にそのまま尻を重ねることを多くの人が厭わなくなりました。それと同時に「足が疲れる」などと言って和式便所が敬遠されるようになりました。
別にその間に世間一般の尻が劇的にきれいになったわけではありませんし、和式の便座が急に負荷をかけ始めたわけでもありません。あんなにお世話になっていた和式を捨て、あんなに毛嫌いしていた洋式に心酔するなんて。私たちはわがままなものだなあ、とつくづく思うのです。
