青唐辛子

ふと興味を抱いて、たびたび青唐辛子を買う夏だった。エスニック料理が好きなので、インターネットのレシピを見ながら炒め物にしたり、タレに混ぜたり、あれこれ試してみた。

赤唐辛子、いわゆる鷹の爪は乾燥したものをよく買うけれど、生の青唐辛子というものにはこれまでほとんど触れたことがなかった。スーパーでは10本、20本と束になって売られていて、しかし実家で食卓に上ることもなかったので扱いには詳しくない。そんな大量に買ったところで使いきれず腐らせるのが関の山だと思い、買うのを躊躇っていたのだ。実際に買ってみると、思ったより日持ちが良い(劣化があまり表に出ないので、私が傷みに気づいていなかった可能性は否めない)。一人暮らしの食材は日持ちが肝心。青唐辛子はそういう点でも私向きで、ますます気に入った。

夏の間は200円、高い店なら300円ぐらいはした青唐辛子が、先週入ったスーパーでは130円で売っていた。しばらく自炊をやめていたこともあって遠のいていた青唐辛子が向こうから距離を詰めてきたら、それは買わないわけにはいかない。

さて青唐辛子で何を作ろうかと考えあぐねていたところ、これまたインターネットで調べると醤油漬けというのが薬味に調味料にちょうど良いらしい。手間も材料も少ないようだったので挑戦することにした。

手順は簡単、青唐辛子を刻んで、3倍量の醤油を注いで、昆布を漬けて、冷蔵庫で寝かせる。さっそく20本の青唐辛子を刻む。

ここで私は違和感に気づいた。久しぶりとはいえ、ただの小口切りがうまくいかない。包丁を下ろすたびに実がバリバリ鳴るし、種が四方八方に飛び散る。夏に刻んだときはもっとサクサクと刃が入って扱いやすかったはずで、こんなに後始末が憂鬱になる野菜ではなかった。種は足元にまで飛び散っている。

そういうことか。安かったというのはつまり、旬が過ぎて質が下がった分、値打ちも下がったというわけか。

いくら表向きに質の良し悪しが出ていなくても、旬は終わる。なまものならば何でも、そして必ず。質の低いものには値打ちがつかない。私たちはそれをわきまえ、見極めていかなくてはならない。

ただ、その一方で、適材適所という向きもある。柔らかく香り良い枝豆が熟して香ばしい大豆になるように、旬は一度とは限らない。その時々の役どころがある……もとい、あるところには、ある。

夏を過ぎ、実も種もある程度育った青唐辛子はどのように頂くのが最善だったか。何事も物は試し、とりあえず今日のところは醤油漬けにしてみよう。しかしくしゃみが止まらない。辛味は現役同然のようだ。

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