昼夜逆転

夜が長い。

夜にやっていた飲食店のアルバイトがゼロになって、ライブハウスも飲み屋も営業がなくなって、そもそも今週なんかは家から出ていないので「帰るのが遅くなった」というケースすら発生しない。帰らないんだから。そうすると、仕事も終わったし夕食も早々に食べてしまえばあとは風呂に入って寝るだけ。21時にはやることがなくなる。

有り余るほどの夜の時間を、これまでどうやって過ごしていたか思い出せない。

幼い頃から宵っ張りだった。「子どもは22時になったら寝なさい」と布団に追いやられても、まだまだテレビを見足りなかったし、布団に潜り込んでからも日記を書いたり音楽を聴いたりしてなかなか寝ようとしなかった。高校生の頃は夜中の3時過ぎまでラジオにかじりついて深夜放送を聞いていて、ラジオの公開収録に行ったときは母がDJに娘の夜ふかしについてクレームを入れていた(その節はすみませんでした、小島嵩弘さん)。

夜はとにかく時間が足りなくて足りなくて、遅くまでせわしなく過ごしていた。趣味嗜好は今も大して変わっていないはずなのに、時間が足りなくなるほど私は何をしていたのだろう。

お天道さまが昇ったら起きて働き、お天道さまが沈んだら仕事を切り上げて床につく。百姓の暮らしはおとぎ話の中だけの話だと思っていたけれど、何のことはない、すべての時間を自分で操作できるようになると自然とそうなることが分かった。

夜は不思議だ。地球が回って時計が回るのは昼とまったく同じなのに、世界から音が消える。闇の中に気配という気配が吸い取られていく。街じゅうの人という人がいなくなって、ひとりぼっちのような気分になる。ブラックホールというのは夜のことなのかもしれないとさえ思う。あの感覚がたまらなく好きだったはずなのに、今となっては夜が有り余っている。

昼間、人に囲まれ人と触れ合うからこそ夜が好きだったのかもしれない。ひとりぼっちが好きなのではなくて、人がいない状況が物珍しくて面白がっていたのだと思う。昼間も人と会うことがなくなった今、昼も夜も私にとっては大して変わらない。昼が夜になり、夜が昼になっている。

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