
もうすぐお茶を飲み終える。
数年前に鬼籍に入られた方の香典返しに頂いたお茶だ。開けるのがもったいない気がして、頂いてから何年もそのままにしていたけれど、飲まないほうが不義理なのではないかと思い直し封を切った。
茶葉の形が分かるようなカチカチの真空パックに鋏を入れた瞬間、アルミの袋はふわっと柔らかくなった。同時に茶葉の新鮮な青い匂いがその場に立ちこめた。何年前の「新鮮」だろう、この「新鮮」が封じ込められたときはあの方もご存命だったのではないか。不思議な心持ちになる。
湯を沸かす。スプーン1杯の茶葉を急須に入れる。沸いた湯を湯呑みに注ぐ。本来ならその湯は捨てるのだけれど、暮らしの上ではもったいないから、それをそのまま急須に移す。5つ数えて、ゆっくりと湯呑みに茶を注ぐ。実家ではそんなことを教わりもしなかった。でもこうすると鼻の奥に香りが抜けるような芳しい緑茶が入る。とてもおいしい。それは、あの人が下さったお茶が上質なものだったからだろうか。学のない私には、茶葉の良し悪しまでは分からない。
もうすぐ茶筒が空く。茶葉を使い終えてしまう。茶葉が切れたら私は、粋を教えてくださった人懐っこい先輩を忘れてしまうだろうか。茶葉が切れたら私は、新しい茶葉を自分で選びに行こうと思う。茶葉のイロハを学んで、少しでも先輩の粋に近づこうと思う。