羽田を出発するとき、外で働いていた人たちが作業を止めて私たちの飛行機に手を振っていた。毎日振っているのだろうか。そうしろと言われているのかもしれないけれど、私はうれしかった。
バンコクには横断歩道なんてあってないようなもので、びゅんびゅん走る自動車とバイクの隙間を見つけて道を渡るほかなかった。あれでよくみんなはねられないな。
タイはとにかく文字が読めなかった。バンコクだから英語で乗り切れたけれど。だからこそ知ろう、伝えようとする筋肉をたくさん使った。自分は何がしたいか、何て言えば願いが叶うかすごく考えた。いつも使わない筋肉だな、と思った。日本に帰ったらまた衰えてしまいそうな気がする。ちょっと怖い。
泊めてくれたGuangは日本が大好きな青年で、ココリコ黄金伝説の1000円節約生活とか、行列が出来る店横断旅みたいなやつとか、とてもよく知っていた。「スゴイジャパン」という番組があるらしく、千葉や奈良のことまで知っていて、「鹿に餌あげたい」とはしゃいでいた。
日本は四季があって美しいから好きだ、と言っていた。そうか、タイには四季がないのか。当たり前に触れているものの良さを私は全然自覚できていなかったのだと気付いた。何も知らない、なーんにも。離れてみて、初めて知る。
バンコクの名所やルートをエピソード付きでたくさん教えてくれた。一度に覚えきれないぐらいたくさん。その話のひとつひとつに私は怖がったり感動したりした。すべて見てみたいと思ったけれど、あまりにも時間が足りなかったのと、初めに行ったエメラルド寺院の人の多さに驚いて退散してしまった。今度来たら、きっと続きを。
エメラルド寺院はたくさんの宝石で覆われた大きな建物が陽の光を浴びてきらきらしているのがとにかくきれいで、ひとりで「わああ」と声を上げた。
本堂に入るとタイ人専用のレーンがあって、五体投地と言うのだっけ、額を地につけて祈りを捧げていた。人がまっすぐに思いを捧げる姿はとても美しく、私はしばらく彼らに見入ってしまった。
しかしエメラルド寺院の周りのお店、俗っぽさにはちょっとだけ笑ってしまった。ノーディスカウント、フィックス◯バーツ。どこの国も変わらない。
