suspect

ああ、やってしまった。財布を失くしてしまいました。歯医者さんで診察券を財布から出し慌てて歯を磨く間に、携帯で打ちかけていたメッセージを気にしながら先生の呼び出しに答える間に、「私って忍耐強いほうなんじゃないか」などと口を開けて自惚れている間に、財布を失くしてしまいました。

いやあ、間が抜けているんだ、私ったら。診療費をツケにしてもらい、さらには後から来た待合室の患者さんにも探すのを手伝ってもらいました。いい大人が、大変お恥ずかしい。看護師さんが「お金貸しましょうか」と言ってくださったご厚意はお気持ちだけ頂いてお断りしました。いやいや、さすがに。

歯医者さんに重ね重ね頭を下げて、見失った財布のことは一旦諦めることにしました。

私の幸薄い財布のことです、現金よりレシートのほうが多かったぐらいですから、財布を失ったことなんて大したことではないのです。ただ、先生や居合わせた方々に後味の悪い思いをさせてしまったこと、否応にも当事者に疑いの目を向けざるを得ない場を作ってしまったことのほうが、私にはひたすら悲しく申し訳なく思えました。

だって、嫌じゃんね。人を信用できないことって。

一切のクレジットカードやキャッシュカードを止めた今、私は実家へ向かう電車に揺られています。恥を忍んで金を無心しに行くわけですが、その実は「人を疑いの目で見てはいけない」と教えてくれた両親にひと目会いたかったのかもしれません。会って、どぶにでも落としたんだろう!しょうがないな!と笑い飛ばしてほしかったのかもしれません。

ああ、そうこうしているうちにまたやってしまった。今度は乗り換えを間違えて、降りるはずのなかった駅に取り残されています。いよいよこれは本当に間が抜けているだけなのかもしれません。しょうがないな!

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