Tokyo

大きな駅に電車が着くと人が一斉に降りました。さっきまであんなに混んでいたのに、私の両隣の席が揃って空席になりました。

年老いた男女が左側の扉から乗り込んできました。乗り慣れた風の女性が私の左に座り、男性に「こっち座りなよ」と私の右側を指したので端に寄ってやると、「すみません、東京の人は優しいですね」私は田舎から来たものだから、と男性が言いました。私がとっさに「私も東京じゃないので」と返すと「そうですか、じゃあなおさら優しいな」と安堵したように言いました。

どうやら二人は姉弟で、東京に住む80歳手前のお姉さんが弟を招いたということのようでした。昔に比べると随分電車の音が静かになった、私も昔のことを回想するなど年寄り臭くなったものだ、ダッペ言葉を覗かせながら弟は姉に一生懸命話しかけていました。

返答を間違ったかな、と私は少し後悔しました。東京出身でないと答えることで緊張がほぐれるといい、と思っての言葉でしたが、東京を好きになってくれるだろうか、と少し心配になりました。

東京は特別な街じゃないから、人が住むただの町のひとつだから、そこに住む者として、気に入ってくれるところが1つでも2つでもあるといいな、と思いました。

目的地に着いてさっと降りるとき、席を振り返って「ありがとうございました」と言った男性に「いえいえ」としか返せなかった自分の野暮さを悔やみました。私も目的地で席を立ちました。

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