幼い頃は夜が来ることを嫌がっていたなあ、とこの頃よく思い出します。夜になるとつみきやままごとの道具でバリケードを作っていました。
ものは大きさも形も材質も何でもよくて、とにかく私をぐるりと丸く囲うようにおもちゃを並べていました。少しでも隙間ができると、母などがつまずいて蹴飛ばした後もすかさずバリケードを修理しました。
私自身、遊んでいるつもりはありませんでした。霊感というのではないのですが、夜になると時折、背後から得体の知れないものが襲いかかってきて連れて行かれるような妄想が起こるのでした。当人は護身のつもりでやっていた、というのが適切なところだったと思います。
けれども父母にとってそんなのはナンセンスなことに決まっていました。寝る前にそうして茶の間でおもちゃを広げる私は単に散らかしているようにしか見えず、母は容赦なく「片付けなさい」と叱りつけました。得体の知れないものに怯え「こわい」と言うのは幼心にもかっこ悪く思え、私は渋々バリケードを縮小するということを日々繰り返していました。
もうバリケードを張ることはなくなりました。けれどもやはり、何もない背後を二度三度振り返ってしまう癖は抜けません。振り返ってもどうせ霊感はないので、何もない虚空を見つめては正面に向き直り、テレビの音量を少し上げます。