みかんの食べ頃は冬である、というのには私も全面的に同意します。ただ、そろそろスーパーの青果コーナーに極早生みかんが並び始めるのを見逃すことはできません。
極早生みかんといえば、私は運動会を思い出します。とにかく暑くて、砂埃の中気が遠くなりそうなのをぐっと堪えがんばった入場行進、応援合戦、短距離走。全校生徒が大団円で大漁節を踊ると、ようやく家族との昼ごはんにありつけるのでした。あの「ザ・盆踊り」みたいな格好で静止するの、恥ずかしかったなあ。
ちくわきゅうり、から揚げ、玉子焼き。ごはんはもちろんたらこのおにぎりです。当然のことながら、お弁当の定番が食べられるのはお弁当のときだけですから、それはもう心躍る昼ごはんでした。日陰にレジャーシートを拡げ、父母と大きなタッパーをつつきました。
そして最後に出てくるのが、極早生みかん。母が「あんたみかん好きでしょ」とデザートに持ってきてくれるのでした。硬い皮、飛び散る果汁、そこら辺に漂う酸っぱい匂いは初物だけが持つ特別感そのものでした。
母が持ってくる極早生みかんは思ったほど酸っぱくありませんでした。このままずっと日陰でみかんを剥き続けたい、と2つめに手を伸ばす頃、ちょうど校庭から放送部が「間もなく午後の部が始まります」とアナウンスをするので、みかんを父に譲って渋々立ち上がるのでした。
少し青い柑橘の匂いが鼻の奥に届くとき、私はいつも汗のしょっぱさと校庭に立ち上る砂埃の匂いを思い出します。極早生みかんは、みかんとは違う、初秋の幸です。