
ハンカチに憧れている時期がありました。ハンカチというのは、いわゆる綿のハンカチのことです。我が家において、こと私に支給されるのはガーゼのハンカチのみでした。
秋が過ぎ肌寒い日が続く頃になると、私の手にはあかぎれが目立ちました。大雑把でいいかげんな私は手を洗った後の手拭きが甘いのでしょう。綿のハンカチでは拭いきれない水分を一気に吸収する、ガーゼのハンカチを母が持たせるようになりました。
吸水力については非の打ち所がありませんが、ガーゼのハンカチの欠点は決定的なダサさにあります。キャラクターもののガーゼのハンカチなんてありませんし、描いてあるのは誰も知らないウサギの一家や転がる果物などでした。私も皆と同じように誰もが知っているキャラクターのハンカチを持ちたい、と心から思っていました。
何かの景品や友達からのプレゼントでもらうハンカチは大抵綿でできていて、私は「ついにきた!」と喜ぶのですが、母が横からそれを取り上げ「もう少しお姉さんになったらね」とたんすの奥底へしまうのでした。綿のハンカチが私の手に渡ることはなく、大袈裟だと思うかもしれませんが、私にとって綿のハンカチは美しいけれど手の届かない高嶺の花なのでした。