「見苦しいものをお見せしてすみません」
見苦しいとは何だ、と血まみれのティッシュを押さえながら憤慨した日のことをふと思い出しました。あれから玉井先生のことが大嫌いになったのでした。
私は比較的鼻血を出しやすい子どもでした。妄想やチョコレートなど関係なく時も場所も選ばずに突然ポタポタと流れ出すので、ひとたび出たら鼻を押さえ雨宿りのようにじっと止血を待つほかありませんでした。
小学校の遠足でオリエンテーリングが始まる、さあ出かけよう、という瞬間にも容赦なくポタポタと流れ出てきたので、私は本部テントで留守番せざるを得ませんでした。やれやれ、とティッシュで鼻を押さえている私の付き添い係になったのが玉井先生で、通りがかった他の先生におどけて言ったのが先の一言でした。
何なんだ、見苦しいと言っていいのは私だけだろうが。あまりにも失礼じゃないか。私に。だいたい好きで出してるわけじゃないんだ私だって。
余計なプライドがたいそう高い子どもでした。早く鼻血が止まらないか、次のワークからは鼻血なんかきっと出すまい、玉井先生の厄介になどならないぞと根深くふてくされた覚えがあります。
けれど不思議なのは、小学校を卒業するときに一番仲が良かったのもまた玉井先生だということです。卒業前、中庭掃除班で毎日顔を合わせていたことは覚えていますが、和解のプロセスはさっぱり覚えていません。プライドはどこへ行ったのだプライドは。
別に今鼻血が出ているわけではありません。北海道へ出かけるところです。
