temper

母が癇癪を起こしたのは私が小学2、3年ぐらいの頃だったでしょうか。「お父さんとお母さんが明日から別々に暮らすって言ったらあんたどっちについてく」声を荒げるでもなく食堂の椅子に腰掛け、いつも家計簿をつけるときと同じ格好で淡々と尋ねてきたことを覚えています。パチンコに行ったきり帰ってこない父を母と二人で待っていたときのことでした。「お父さんと結婚して楽しかったことなんて一度もない」母はそう言いました。幼心に私は「それは嘘にしたってあんまりだ」と思いました。涙をたっぷりと浮かべ「そんなの考えたことない」と答えるのが精一杯でした。母は黙り、その話はそこで終わったのではなかったかと記憶しています。

昨日観た月刊「根本宗子」の芝居は連日大盛況だそうです。会場の隅に立って観ている間、当時のことが幾度か脳裏をよぎりました。そういえばあの後ひとと生活を共にしたとき、私は「楽しいことなんて何ひとつなかった」と言っておしまいにしたのでした。癇癪は遺伝するのだ、と思いました。

あのとき口から出た言葉は嘘だったでしょうか。私はそのようには思いません。とするとひょっとして、なんてことは考えないことにします。

コメントを残す