「万障お繰り合わせの上おいでください」
という言葉があります。万(よろず)の障害、障壁を繰り合わせ何があっても来いよ、という、控えめな顔してとんでもない言葉です。「万障繰り合わせ」はさすがに大切な用事でしかしか使いませんが、「申し訳ない」然り、「有り難う」然り、日本ではたまにびっくりするような言葉が何食わぬ顔で登場します。
僕のために私のために「万障お繰り合わせ」てほしい、という気持ちはすべての誘い手が持ち得るものでしょうが、実際はなかなかそうもいきません。相手にけちをつけるつもりは毛頭なくても、心の中には優先度という指標があります。人の心の中まではどうこうできません。
「万障お繰り合わせ」てもらえなかった人が恨み節を言うのはとんだお門違いですし、「万障お繰り合わせ」てもらえたならそれはすごいことなので、素直に喜び相手を労ることを忘れてはいけない、と思いました。なぜなら私たちは言葉の成り立ちと同じくらい日常の奇跡を軽んじるからです。
