靴を買いました。
この間雨が降ったとき、水たまりを踏まないように気をつけていたのに左足だけあっという間にぐっしょり濡れてしまったのは、プーマのスニーカーの左足に穴が開いていたせいのようでした。ひっくり返してみるとかかとも擦り切れそうになっていました。折しもパンプスのかかとのゴムが擦り切れて、中に小石が入って歩くたびにカラカラ鳴るのでスニーカーに切り替えたところでした。
北千住の商店街の、潰れたお店の跡地は1週間単位で借りられるスペースになっていて、ワケあり市とかオールディーズのCDとかを売っています。どこから来たのか、1週間過ぎたら次はどこへ行くのかも分からない、謎のお店屋さんたち。
ルミネをぐるぐる回って、雑貨屋さんをうろうろしてもめぼしい靴がなく、途方に暮れながら商店街をぶらぶらしていたら、今日は靴屋さんが出ていたというわけです。サンダルやパンプスや、そういった女性靴が蛍光灯に照らされていました。
通販ブランドの靴が1割、ショップカードの置かれた知らないブランド靴が4割、その他のいろいろな靴が5割。靴にも流行があるのでしょう、似たようなデザインの靴が5、6足ずつ並んでいますが、どの棚にもそのブランド靴が紛れていました。店の奥のレジには店を持っていてもおかしくない年頃のおじさんと、若くて物静かな感じのお兄さんがいました。
もしかして、このブランドはお兄さんのブランドなのではないかしら。私は考えました。他のブランドの靴と並べてどちらが売れるか、靴屋のおじさんの協力を得て市場調査をしているのではないかしら。ここで他のブランドの靴を選んだら「なんで僕のじゃなくこっちを選んだんですか」と問い詰められるかもしれない。靴を、お兄さんの靴を買ってあげなくてはならない…!
私は焦りました。そこそこかわいくてなるべく安い靴を見繕って帰ろうと思っていたのに、大変なミッションを背負ってしまった。確かにお兄さんの(だと思われる)靴はかわいい。でも他の靴のほうが安い。こっちの靴はヒールが高すぎるし、こっちの靴はなぜかすごく重いよお兄さん。
迷って迷って迷いましたが、意を決して、一足をレジに持って行きました。お兄さんのブランドの(だと思われる)、紺色のパンプスでした。お兄さんは「ありがとうございます」と靴を袋に入れました。お金を渡すと、隣のおじさんがお釣りをくれました。
なんということはない、普通の靴屋さんの光景でした。
お兄さんが作った靴かどうかは、永遠の謎です。私が背負ったミッションに意味があったのかどうかも、永遠の謎です。
