
月が大きいですね、と突然タクシーのおじさんが言いました。大根の輪切りの、あのー半分にしたやつみたいな、ねえ、大きい月ですよ。後部座席から身を乗り出してみると、正面右手の建物の上に下弦の半月が見えました。高度が低いせいか、いつもより色濃く、大きく見えました。ほどほどに天気の話をしてタクシーを降りた後で、私は月を撮りました。
花鳥風月、という言葉があります。美しいものや風情あるものを並べた言葉だということですが、一方で「これらを写真に収めようとするなんて人生の終末も近い」と誰かが愚弄していたことも思い出します。
おじさんは写真こそ撮っていなかったものの、私よりも人生の終末に近いであろうおじさんが、月を大根のようだと面白がるのは、何だかとても幼く、なかなか素敵なことのように思えました。同じ行く末ならば、私は花鳥風月を面白がることができる方の終末を目指したいです。