「文章を書くというのは、女の人を口説くのと一緒で、ある程度は練習でうまくなりますが、基本的にはもって生まれたもので決まります」
日本一の人気小説家にそんなことを言われて膝から崩れ落ちた人は少なくないのではないでしょうか。かく言う私も人から伝え聞いたその一言に少なからず絶望したところです。
けれども、「もって生まれたもので決ま」ると彼が指摘したのは色の話ではないかとふと気付いたのですが違うでしょうか。優劣ではなく、何を拾いどんな立場からどんな構成で書くか、といったことです。目指す方向性、書きたい文章に近付けることはある程度の努力で賄えそうですが、最終的には自分の書き方や手癖、思想がどうしても滲み出てしまいます。それは「もって生まれたもの」と言えるでしょうし、受け入れるほかないと私も思います。むしろ、受け入れることがいわゆる「上達」への近道のような気さえしているのですが、どうでしょうか。
そうとでも考えないと、どう足掻いても女の人を一生口説けない人が街に溢れてしまうではありませんか。
