9時の鐘でした。ごーん、ごーんと音が聞こえるのは気のせいかと思ったら、テーブル中央の大きな花瓶の向こうに大人の背丈より高い柱時計が隠れていました。
当たり前のような顔をして座りましたが、一人でここへ来るのは初めてのことでした。前に来たのは1年半ほど前だったでしょうか。喫茶店や映画の評論を聞かされる時間も楽しかったものです。あれきり会っていないのだっけ、とこの1年半を回想しました。
あれからすっかり映画を観るのが気に入ってしまった私は今日も映画館に行くつもりでいましたが、上映時間に間に合わなかったので、代わりの気晴らしを探しに街へ出たのでした。コーヒーでも飲んで寛ぎながらなかなか読み進まない本の続きを読みたい、そう思ったときにスターバックスしか行くあてがないのはつまらないことだと思いました。スターバックスは好きでも適材適所というものがあるのです。
豆の適性や良し悪しは分かりませんが、コロンビアを頼みました。かばんから『牛への道』を出したところでちょうど9時の鐘が鳴ったのでした。
