ええと、何日かけて自転車に乗れるようになったのだったっけ。運動神経の鈍い私のことですから、そう簡単に自転車を乗りこなせたはずなどないのですが、練習のつらさはてんで覚えていないのです。
初めは母が家の前の通りで練習に付き合ってくれたのですが、私の覚えが悪く愛想を尽かしたのでしょう、「乗れるまで家に入れないから」と私を置いて帰り締め出してしまいました。
誰もいない住宅街の通りのど真ん中に一人きり、隣にはさっぱり乗れない自転車だけ。もう金輪際家に入れない気がして、世界中に自分しかいないような気がして、私は声の限りに大泣きしました。
声を聞きつけた武本さんと飛松さんのおじいちゃんが、何事かと家から飛び出してきてくれたのが幸い。泣きじゃくる私から事情を察し、日が暮れるまで練習に付き合ってくれました。
おじいちゃんたちとの特訓の甲斐あって、おかげで私は自転車に乗れるようになりました。どんな練習をしたか、どれほど大変だったかはさっぱり覚えていません。それでも、あの日の特訓があったおかげで私が自転車に乗れるようになったのは確かなことでした。
私はきっと、おじいちゃんたちが助けてくれたことが相当うれしかったのだと思います。あの時ちゃんとお礼を言えたかどうか、それだけが心残りです。
