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「ちゃんとお客さんが集まるようなライブをしないといけないな、っていうか。そう思うとむやみにライブ出てもダメだなとか、呼んでくれた方の期待に応えなくちゃってね、思ったんすよね。大人になっちゃったんすよー、ははは」

いつまでもやんちゃで向こう見ずだとばかり思っていたその人は、久しぶりに会うと柄にもなく大人びたことを言いました。

「僕の大好きなバンドのカバーをします」と言ってセンターマイクにアコギ一本で歌った歌は慎み深くも率直で、下手な飾りはないのに色気はあって、ほんの一瞬も見逃したり聞き漏らしたりできないものでした。いつの間にこんな歌が歌えるようになったのか、と驚きました。

聴いていると25歳の頃の自分が蘇るようで、急激に歳を遡る感覚にくらくらと目眩がしました。その歌を初めに歌った人は25歳でこの世を去りましたが、今ここで歌う彼も、今ここで聴く私も、いともたやすく25歳を追い越してしまいました。あっという間に歳をとり、30歳の私にはもう25歳の感覚を取り戻すことはできないのだと悟りました。

大人になると、伸び放題だった新鮮な枝葉は輝きを忘れしなびていきます。けれどその分、幹は太く強固になっていきます。

瑞々しさへの執着を捨て、ひと回り丈夫になった彼は昔とはまるで別人のようでした。歳を重ねて別人になることはとても美しいことだと思いました。

私は、今宵の彼を美しいと思いました。

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