地球上でもっともおいしい食べ物はしっかり火を通した焼きたらこだと思います。塩加減、じわりと滲み出るだし、プチプチとした歯触り、焦げ目のついた皮。焼きすぎた表面もクッキーか何かのような硬さと香ばしさがとても良いです。
子どもの頃、一番の贅沢は焼きたらこでした。焼きたらこが食卓に並ぶときは私にとって特別で、ステーキよりもカニ鍋よりも喜んで食べました。家族の主菜に焼鮭が並ぶ中、私の前には小皿に焼きたらこが一腹乗るだけ、ということもありました。傍から見たらアンバランスな光景でしたが、私にはこの上ない贅沢でした。
小学生の頃は、寝覚めの悪い私を起こそうと、母が眠っている私の口に焼きたらこをねじ込んだことがありました。母が母なら子も子です。眠りながら私はもぐもぐと頬張り「ん、何だこれは」とそのおいしさにパッチリと目を覚ますのでした。
今も焼きたらこへの愛は変わりません。たまに居酒屋で焼きたらこを見つけては頼んでみますが、どこもかしこも半生が好みのようでなかなかあの味に辿り着けないので、最近は家で粛々と炙って食べています。地球上最高の至福は意外なところにあること、そしてそれはそう簡単に手に入らないこと。私はそれを焼きたらこから学びました。
