昔から貧乏性の気があるのか、細々したものを捨てられずについついとっておく性分です。だから、生家を取り壊して引っ越すと決まったときなんてそれはもう大変でした。これはあの時の記念、これはまあまあ大切なもの、これもいつか使うかもしれない。一向に減らず、かといって分類もできず、私の荷造りは難航を極めました。
そんなときに母に言われたのか何だったか、私を導いてくれたのは「火事に遭ったと思って諦めろ」という一言でした。荒療治が過ぎるというか、聞く人が聞けば怒られると思うのですが、極論を言えばすべてを失っても自分さえ生きていれば何とかなるものです。必要な物でも買うなり借りるなりすれば補えるし、買えない思い出の品も「あれは火事で燃えてしまった」と言い訳すれば諦めるほかなくなります。
「これはあの時の記念、これはまあまあ大切なもの、これもいつか使うかもしれない」
最近は、そんな荷物がずいぶんと山積みになって私の足を重くしていたことに気付きました。引っ越したいなら荷物は軽いほうがいい。火事に遭ったと思って諦めろ。
その呪文を唱えただけで、ずいぶん身が軽くなったように思います。さあ、火を付ける支度をしなければ。
