夜のプールの底を泳いでいると、自分が世界で一人ぼっちのような気分になります。視界が青一色で、鼓膜を押す水圧でキーンという音だけがして、他には何も聞こえません。水の底を泳ぐ人なんてそんなにいないので、誰とも会わず、一人ぼっち。寂しくて、怖くて、もう誰にも会えない気がして、息が苦しくなるより前に必死で水面を目指しました。
昨日の夜は、あの時とよく似た感じがしました。どこからか聞こえる風鈴の音を除いてはまったくの無音で、無風で、私の他に誰もいない道を歩いて帰りました。点々と灯る街灯は水面の向こうで光るライトのように靄でぼんやり霞んでいました。
そういえば水面に戻る前、怖さがやってくる直前にいつもほんの一瞬だけ「ずっとここに居残ってしまおうか」と思っていたことを思い出しました。きっとあの瞬間は、何かの境界線の上にいたのだと思います。
背後から二人連れの自転車がガチャガチャと他愛ない会話とともにやってきて、私は水面の上の世界に戻ろうと思いました。
