子どもというのはなぜああも匂いに敏感なのでしょう。コーラの匂いの消しゴム、ぶどうの匂いの鉛筆、何に使うかも分からないビーズにまでレモンの匂いがついていました。
匂い付きのポケットティッシュはちょっとしたステータスでした。小さくて、色や柄も凝っていて、一枚一枚からチョコレートの匂いがするティッシュ。化粧を怠らない若くておしゃれなお母さんの家の子どもは毎日違う匂いのポケットティッシュを持ってきていて、いいなあ、と私は指を咥えるばかりでした。家もいい匂いがするのかな、と仏壇の線香の匂いに包まれた我が家を思い羨みました。化粧っ気のない母にはいい匂いのティッシュなんて買ってもらえるはずもなく、街頭でもらったティッシュを使うか、大人用のトイレに流せるティッシュを買ってもらうのがやっとでした。トイレに流せるティッシュだということは、誰にも言いませんでした。
私を診てくれた歯医者さんからあの甘い匂いがふわりと漂い、ふとチョコレートの匂いのティッシュを思い出しました。もう流せるティッシュも匂い付きティッシュも自分で買える歳にはなりましたが、今度はあのティッシュを人前に出すのが恥ずかしい歳になってしまいました。あれはいつ買うのが正解だったのだろう、そして今のトレンドは何の匂いなのだろう。
気になって仕方がありません。
