幸田文展へ行きました。世田谷区に住んでいた頃はとうとう一度も行くことのなかった世田谷文学館は、思った以上にきれいで整った施設でした。
ミュージアムショップには幸田文作品がずらりと並べられており、普段書店で探し回っていた本も置いてありました。私は思わず駆け寄りましたが、展示を見る前から売店に寄るのも大人げないので、展示に歩みを進めました。
展示は期待に違わずとても素晴らしいものでした。幸田文さんの原稿や着物、持ち物、暮らしていた町の風景などが彼女の遺した言葉とともに展示されていました。一つ一つのエピソードに吹き出したり涙が浮かんだり。あれだけのベストセラー作家なのにまるで見知った親戚のおばさんのようで、本当に「会ってみたかった」と思わずにはいられませんでした。1990年に没しているので、同じ時代の空気を吸えたことに幸せを感じつつ、気付くのが遅かったことはとても悔やまれました(もっとも私は6歳だったので知らなくて当然ですが)。
胸を打つ言葉がたくさんの作品から引用されており、ああ覚えきれない!早く作品を読みたい!という気持ちでミュージアムショップに寄ると、入る前に狙っていたあの本がありません。誰かが買っていったようで、もうどこにもなくなっていました。店内には、ちょうどトークイベントを見終えたおばさんの団体がわらわらと土産物を買いあさっていました。
何が今日限定だ、餅なんか売りやがって。文学館だろうが。本を売れ本を。途端になんだかとても悔しくなって、買うつもりだった図録も買わず早足で文学館を後にしました。
「人には運命を踏んで立つ力があるものだ」
ふてくされて駅を目指す道中、帰りがけに渡された展示記念品のカードの一節を思い出しました。買えなかったのも何かの縁、ここで売っているぐらいならまだどこかの書店で買えるはずだ。まだ手持ちの本も読み終えていないし、これから一冊ずつ、一行ずつ彼女の言葉を追っていこう。ムダ遣いが抑えられてよかったじゃないか。うんうん。
この展示を経て、すっかり幸田文信者になってしまったようです。私が掃除に凝り出したら、誰か熱を測ってやってください。
