今、私は短パンサンダルで千代田線に飛び乗り、しれっと座って音楽なんか聴いていますが、内心、とても困っています。
なぜなら100円玉を拾ってしまったから。
重い瞼を開け重い腰を上げてさあサッカーを観に行こう、チケットを発券してもらわなくてはとコンビニへ立ち寄ったのは17時半を回った頃。タイミングの問題か、レジは混み合っていたので私もおとなしく行列に並びました。手もとが緩んだのか、前のお姉さんが小銭を落とし慌てて拾い集めました。落とした小銭は少量だったので、すぐにお姉さんが一人で拾いきりました。お姉さんのすぐ後ろで手伝おうかと軽く屈んだところでしたが、事なきを得て私も軽く安心しました。
ふとお姉さんのかかとの後ろを見ると、もう1枚、100円玉が落ちていました。けれども音の感じや散らばった範囲からしてお姉さんは小銭を拾いきったはずで、100円玉をお姉さんに渡すのは少し違うような気がするのです。でも100円玉を落としたままにしておくのはしのびない。とりあえず拾おう、拾って募金箱にでも入れてしまおう。奥のおばちゃんのレジには募金箱があるようだ、あのレジに入れば…
「お次でお並びのお客さまどうぞー」
こういう時に空くのは手前の若いお兄さんのレジと相場が決まっているのです。当然、募金箱なんてないのです。
そうだ、駅前に交番があるから募金箱の1つぐらいは…ない。普段見過ごしているだけで駅の改札には募金箱が…やっぱりない。
ジュースでも買ってその場で使ってしまえばいい、と思うかもしれません。けれども妙なところで小心者な私は、拾って勝手に我が物にして利益を得たりなんかしたら後でどんな罰が当たるだろうかと気が気じゃないのです。1円や5円ならまだしも、100円玉ともなるとなおのことです。
今、私の左手の中では100円玉がいい具合の温燗にあたたまっています。さらに言えば同じように途方に暮れて持ち帰ったまま使われることもなく我が家で待機し続けている小銭が2、300円はあります。
いい人だと思われたいわけでも何でもありません。お金なんか落とさないでほしい。困るから。
表参道に着いたので、道々の店を覗き込みながら国立競技場へ向かおうと思います。もおおおう。
