7日の木曜日、母から手紙が届きました。宛名が母の名だったから分かったのではありません。文字の中心線のヨレヨレした感じが確実に父ではなかったから分かったのでした。
父勝幸はどういうわけか昔からとても字が整っていて、私はずっとそれに憧れていました。それとは対照的に母セイ子の字はとても雑で荒れていて、読めないほどでした。だから名札に名前を書いてくれるのはお父さん、役所の書類を書くのもお父さん、お母さんの名前でお父さんが手紙を書くことだって当たり前のようにありました。逆に言えば、それほど母は人前で字を書くのが嫌いでした。そんな母がわざわざ自分で筆を握って手紙をよこしてきたことに、私は大変驚いたのでした。
母が送ってきたのは、私の誕生日を祝う手紙とご祝儀でした。「足りないだろうけど、服でも買う足しにしてください」と一筆添えられたお金は、華やかな便箋や封筒にこそ包まれていないものの、ぴしっと新札になっていて、我が家に昔から漂う生真面目さや律義さが匂い立つようでした。
母が父に頼まず自分で書いた手紙の宛名からは、一文字ずつ、一画ずつ、縦横慎重に筆を置いた様子が伝わってきました。まるで照れ隠しのようにいつもどおりの走り書きで書かれた中の便箋とは大きな違いで、それもまた微笑ましいのでした。
母から手紙をもらうことなんてもうないかもしれません。せっかくならもっとたくさん内容を盛り込んでおいてほしかったけれど、筆不精な母にそれを強いるのも無茶な話なので、私はこの手紙をずっと大切にしようと思います。
